大崎町で第3回「OSAKINI Cafe」が開催されました
大崎町SDGs推進協議会(以下、協議会)では、循環型社会の実現のため、大崎町や未来の社会に必要な評価・研究・実践を科学的知見から行うプロジェクトである「サーキューヴィレッジラボ」を展開しています。
5月13日、ラボが主催している「OSAKINI Cafe」の第3回目を実施しました。当日は、「子どもや孫世代に残したい住宅とは」をテーマに、これからの住宅になぜ断熱が必要なのか、節約&エコな住まいを参加者のみなさんと一緒に考えました。
「OSAKINI Cafe」とは…
様々な分野の研究者や専門家の方々と、大崎町の住民の皆様が、カフェのような感覚で、大崎町の一歩先の未来の姿をともに考え、意見交換をする月に1度のイベント。
半年間の定期開催を通じて、実現したい未来のイメージを共有するとともに、実現に向けて協働できるネットワークを広げることを目的とした場です。
ラボの所長である大岩根 尚さんが店長を、協議会のスタッフが店員を勤め、毎回ゲストをお招きして開催します。
※今回のOSAKINI Cafeのみ、大崎町役場企画政策課主催の「断熱教室」と共催です。
そもそも「断熱」って何で必要なの?
第3回のゲストは、一級建築士で省エネ建築診断士でもある田渕一将さん。
冒頭に、田渕さんの経験を交えながら、鹿児島で断熱が必要な理由をお話しいただきました。
田渕さんが断熱について特に意識されるようになったのは、大阪で働いていた際に北海道出身のクライアントから「冬は北海道の家より大阪の家の方が寒い」と言われたこと。
そのとき、鹿児島の実家の寒さ思い出し「大阪の家よりも鹿児島の家の方が寒いのでは」と考えるようになったといいます。
北海道や大阪、そして鹿児島で築年数や住居のタイプが大きく異なるわけではなく、その違いは暑さ、寒さに直結する断熱性能です。鹿児島や宮崎をはじめとした温暖なイメージの地域の高断熱住宅の普及率は、他の都道府県に比べて低くなっています。
家の寒さは、健康へも影響します。部屋の中が18℃を下回ると様々なリスクがあり、熱性能を高めると喘息、せき、アトピーなどの改善や血圧の安定につながることが研究から分かっています。さらに、病気にかかりにくくなることから、医療費の軽減や休業による所得の減少を防ぐといったメリットに繋がるそうです。
「健康はお金では買えないけど、健康でいられる家を建てることや、改修することはできる」と田渕さんは言います。
断熱でどれだけお得になるのか
質問コーナーでは、ふだん家の設計に関わることがない方の素朴な疑問や、事業者の方の専門的な質問など、たくさん寄せられました。
その中でも多かった質問は、お金にかかわることです。
家にかかるコストは、大きく分けると住宅ローンなどの建設費と、電気やガスなどの光熱費の2つです。
全国平均では、光熱費の中で冷暖房費が占めるのは約3割。この負担は、住宅の熱の出入りを軽減することで変わります。
ここで、断熱と同様に気密性能も大事だと田渕さんは言います。気密性とは、建物の様々な隙間からの空気・熱の出入りのしにくさのこと。気密性能が不十分だと、換気ができていなかったり、断熱材が効果を発揮しなかったりします。
熱と気密の性能を高めると、冷暖房費だけでなく、エアコンの容量が小さく済んだり[田渕2] エアコンの台数が減ったり、と買い替えのコストも下がります。家に住み続ける数十年のスパンで考えると、差額は大きくなります。
断熱によって室内の温度差が少なく、快適で、お財布に優しい家が実現できると田渕さんは語ります。
持続可能な地域づくりを「住宅」から考える
最後に、田渕さんから「はじめは省エネや健康増進など、自分自身のことを考えた家づくりであっても、結果として地域内のエネルギー循環や資産としての建物の循環に繋がり、住宅から持続可能な地域ができる」とメッセージをいただきました。
断熱に関した補助金制度も設けられており、法改正によって高断熱が当たり前になる未来を見据えている大崎町。事業者の方、住民の方、役場の方とが一同に集まって住宅から持続可能な地域づくりについて考える回となりました。
次回は、7月1日 (土)にセントロランドあすぱる大崎にて開催予定です。土屋 有准教授(宮崎大学地域資源創成学部)をゲストに迎え、『地域の事業者がすぐに始められる環境配慮型ビジネス』をテーマに大崎町の未来について考えます。ぜひお越しください。
OSAKINI Cafe 4回目の申込フォーム
当日の様子をグラフィックレコーディングでも!
(文・インターン 髙橋知成)
プレスリリース
最前線で活躍する研究者や有識者とリサイクル率日本一の大崎町の住民が、これからの循環型社会について気軽に語らう月1イベント「OSAKINI Cafe」を3月よりスタート!
クレジット
登壇
おりなす設計室 代表 田渕 一将様
共催
大崎町役場企画政策課
アーカイブ
グラフィックレコーディング: 大保 拓弥(パッション)様