東京で「第3回OSAKINIプロジェクト活動報告会」を開催しました

企業連携 報告会 展開

大崎町SDGs推進協議会(以下、協議会)が進めるOSAKINIプロジェクトは、企業版ふるさと納税による寄付や企業・団体の皆様との連携によって支えられています。

協議会では、毎年関係者の皆様に活動の進捗や展望をご報告する機会として報告会を実施しており、昨年度同様、東京で11月7日に実施しました。完全招待制で100名規模のイベントとなり、たくさんの方々に大崎町や協議会の活動についてお伝えすることができました。
今回は、イベントの様子をお伝えします。

開場!交流会からスタート

開場から開演まで1時間ほど時間を設け、まずは交流会からスタートしました。基調講演や報告などのトークだけでなく、今回は展示も数多く準備しました。参加者の方々は、展示を見てまわったり、それを題材に協議会メンバーや他の参加者の方々と話したり、名刺交換をしたりと、交流が始まりました。

観覧席に荷物をおき、さっそく展示を見学されたり、参加者や運営スタッフと名刺交換される姿が見られた

連携いただいた企業も増えてきている中、特に目を引いた展示は株式会社SANKYO様との連携プロジェクトである、遊技機のマテリアルフローの可視化パネルでした。

過去の遊技機の不正廃棄問題を受け、業界全体でリサイクル・リユース推進の団体を立ち上げ、廃棄物処理業者の選定や使用済み遊技機の回収システムの構築などに取り組んできたため、業界全体でリサイクル率90%以上を達成しています。
今回は株式会社SANKYO様と連携し、業界全体で取り組んできた道のりや工夫、株式会社SANKYO様における遊技機のマテリアルの流れを図式化したもの、協議会と連携して実施したワークショップのレポートを3枚のパネルにまとめ、掲示しました。遊技機の持つポップなイメージと、企業カラーであるブルーをベースに、リサイクルやリユースの流れをわかりやすくイラスト化したことにより、多くの人が興味を持っていただきやすいデザインになったのではないでしょうか。

他には、桑茶やお酒、干し芋の振る舞いもご用意しました。
紙から紙へのリサイクルが可能になったパッケージの黒若潮(若潮酒造)や、大崎町で育てられた梅を使って作った梅酒、有機で育てられた桑のお茶などを振る舞い、参加者の方々に楽しんでいただきました。

竹林整備で出る大量の竹。大崎町では竹の利活用として一部集落が竹炭を作り、蒔いた畑で芋を育て干し芋を作っています。
今年度から新規に導入された視察用のパネルを展示
資料や掲載媒体も展示し、参加者の方々も熱心に読んでいただいた
12月下旬にプレオープン予定の体験型宿泊施設の模型も展示

開演!オープニング

司会の中垣が呼びかけ、イベントがスタート。まずは協議会代表理事である千歳よりご挨拶を申し上げました。

広報・中垣による司会進行
用意していた席数を上回る、多くの方にご来場いただきました
大崎町SDGs推進協議会 代表理事であり、大崎町の副町長でもある千歳史郎の挨拶

多摩美術大学の永井教授による基調講演と、中村教授および協議会の齊藤専務理事を交えたクロストークを実施

多摩美術大学 永井様

前半は基調講演として、多摩美術大学 美術学部統合デザイン学科教授 永井一史様をお招きし、デザインとは何か?といった前提から、協議会の取り組みも掲載いただいている『すてるデザイン』執筆に至ったプロジェクトのお話、そして今後大崎町や協議会とどう連携する可能性がありそうかについて、お話いただきました。

永井様からは、実際に大崎町でフィールドリサーチした際に気づいた点などもお話いただきました

参加者の方々からはアンケートを通じてこんなお声をいただきました。

”まず「デザイン」に対するイメージが少し変わりました。これまでは「アート」に近いイメージを持っていました。「かたちにする」ということを改めて考えました。これから「デザイン」という視点でも循環型経済や資源循環について考えたいと思います。”
”「所有する意志を持たなくなったものがごみになる」というところで私たちのごみに対して持つ意識を大きく変えた言葉でした。”
”資源循環について、デザインを切り口に考えたことがなかったので大変新鮮かつ、とても勉強になりました。”

基調講演を賜った後、同じく多摩美術大学のリベラルアーツセンター/大学院教授である中村寛様にご登壇いただき、弊社専務理事である齊藤を交え、クロストークが行われました。

多摩美術大学 中村様

まずは中村様からインスピレーショントークとしてデザインにおける暴力性や土着のサーキュラーについてお話いただき、その後お互いのお話を聞いての感想や、「サーキュラーエコノミー」という外来の概念を、日本独自の文化とどう合流させて浸透させていけば良いのかについて話していただきました。

大崎町SDGs推進協議会 専務理事 齊藤

普段、無自覚に使っている「サーキュラーエコノミー」という概念も、捉え方や視点ひとつでとても違ったものとして見えてくる、そんな気づきをいただいた基調講演とクロストークでした。

永井一史
多摩美術大学 美術学部統合デザイン学科教授
様々な企業・行政の経営改革支援や、事業、商品・サービスのブランディング、VIデザイン、プロジェクトデザインを手掛けている。統合デザイン学科では、これまでのデザインの領域区分を取り払い、諸領域を横断した新しいデザイン教育を行なう。著書に『博報堂デザインのブランディング』『すてるデザイン』など。

中村寛
多摩美術大学 リベラルアーツセンター/大学院教授
文化人類学者。デザイン人類学者。「周縁」における暴力、社会的痛苦、反暴力の文化表現、脱暴力のソーシャル・デザインなどの研究テーマに取り組む一方、人類学に基づくデザインファーム《アトリエ・アンソロポロジー》を立ちあげ、さまざまな企業、デザイナー、経営者と社会実装をおこなう。著書に『アメリカの〈周縁〉をあるく――旅する人類学』、『残響のハーレム――ストリートに生きるムスリムたちの声』など。

なお、今回は多摩美術大学からは登壇者のお二人以外に学生にも数名参加いただき、会場では大崎町のごみの捨て方をデザインの視点で捉えなおす授業に紐付き、ディスカッションする風景も見られました。

大崎町役場の職員とごみ袋を手にディスカッションする多摩美術大学の学生

大崎町で長年積み上げてきた分別やリサイクルの仕組みが、学生やデザインという違った視点で捉えなおされることで、さらに変化していく可能性があることを、改めて感じた報告会前半でした。

後半は協議会事務局から活動報告を実施

協議会からの活動報告では、設立から2年半の中で行ってきた取り組みと今後のビジョンを共有しました。
協議会の藤田と、西伊豆町役場 産業建設課 農林水産係 主幹の山本友也様から、「自治体の廃棄物処理システムを循環型に変革するためのアプローチ」と題して、生ごみ堆肥化の他地域展開、「ALL COMPOST PROJECT」の活動報告を行いました。

協議会事務局 藤田
当日の配布資料より引用
西伊豆町役場 山本友也様
当日の配布資料より引用

参考:大崎リサイクルシステムの展開に向けて、静岡県西伊豆町に現地調査へ

藤田からは、昨年リサーチ段階だったプロジェクトが実施フェーズに移り、実際に他地域で実証実験を開始したり、展開プロセスがおおむね固まったとの報告をしました。
山本様からは、なぜ生ごみの堆肥化を展開するに至ったかの背景や、実際に実証実験をしてみることでどういうことが見えてきたのかを、展開先の自治体担当者として実感を持ってお話いただきました。

次に、事務局の中垣と井上からは「視察・研修が生み出す循環のアイデア」として、2年半の視察受け入れを通じた実績や地域側の変化や、企業と自治体の連携の次のステップとしての研修について報告をしました。

協議会事務局 中垣・井上
当日の配布資料より引用

視察を通じて大崎町に年間600名以上の方にお越しいただいている実績に加え、中垣からは、視察の担当者として案内しながら工夫している点や、広義のデザインとして言葉やストーリーを整理した点について話しました。井上からは、視察の次のステップとして、大崎町をフィールドに企業の方が学びを深めて、自社の取り組みに活かす企業研修の提案や、これまでの企画で意識してきた点を伝えました。

最後は、事務局の遠矢から「循環のある未来の暮らしと循環を意識した施設づくり」として、年内プレオープン予定の体験型宿泊施設の整備と、循環を意識したプロセスから見えてきた課題感などを報告しました。

協議会事務局 遠矢
当日の配布資料より引用

実際に体験型宿泊施設の整備の中で、解体や設備導入に際し直面した疑問や工夫したポイントをご説明し、建築分野における資源循環で今できることと、今後仕組みとして解決していかないと難しいことを話しました。

最後に専務理事の齊藤から締めの挨拶として、協議会の今後の取り組みを加速し循環型の社会を作っていくために、ぜひ連携をはじめとしたお力添えをいただきたいと参加者の方々に呼びかけ、イベントは終了となりました。

協議会専務理事 齊藤

いただいた感想

イベント終了後に実施したアンケートではたくさんのご感想をいただきました。いくつか抜粋して、ご紹介します。

大崎町に訪問した際に質問出来なかったことを交流会で質問できたので良かったです。スタッフの方も丁寧に対応して下さったので楽しい気持ちで参加することが出来ました。

All Compost Projectが行っている他自治体に向けた実証機会の提供が、大崎町のみならずその取り組みを他に繋げていくという所がすごく素敵なプロジェクトだと思いました。

展示物では大崎町のごみの分別がわかる印刷物や、ごみ袋が印象に残りました。

(報告パートにおいて)素直なご見解を聞き、最初から再利用のしやすい設計をする必要性を感じた。

大崎町への視察が年々増加しているのは、もちろん大崎町の取り組みが注目されていることもありますが、もっとよく理解してもらいたいという運営側の努力を非常に感じました。

平日日中のお忙しい中、多くの方にお集まりいただき、誠にありがとうございました。
普段はオンラインでやりとりしていることも多く、取り組みの実態が掴みづらいこともありますが、こうして関係者の方やご興味を持っていただいている方が一堂に会すると、これまで積み上げてきた関係性の深さや広さを思い知り、嬉しい気持ちになりました。
残り3ヶ月を経て、協議会が活動を開始してからまる3年になります。次の3年は、より取り組みを広げ、資源循環型社会への歩みをさらに進めるため、引き続きご協力・ご支援いただけますと幸いです。

メディア掲載

  • オルタナ「ごみリサイクル率14回日本一の大崎町、国内外にノウハウ展開」https://www.alterna.co.jp/105685/
  • 月刊廃棄物 2023年12月号

(写真:池田太郎、文:ディレクター 井上雄大)

クレジット

ご協力いただいた方々

  • 登壇:多摩美術大学、西伊豆町役場
  • ロゴ・チラシデザイン:合作株式会社(中原未央様)
  • 展示制作:合作株式会社(横井絵里子様)
  • 展示協力:株式会社SANKYO
  • パワーポイント制作:合作株式会社(中原未央様)
  • イベント写真撮影:池田太郎様
  • 会場連携:一般社団法人アーバニスト
  • 運営サポート:大崎町役場・合作株式会社
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