大崎町の小中学校の先生方と一緒に環境学習ガイドブックを開発しました

教材開発

大崎町のリサイクルシステムを基盤とした環境やSDGsについて学べる教材を、大崎町の教員とともに1年間かけて開発し、導入・検討するプロジェクトが終了しました。

そして、2023年1月に、授業実施のためのガイドブックが完成。小中学校9年間での学びの流れや、体験学習などを組み込んだ総合の授業例が掲載されています。10ヶ月間、先生方が集まり議論を重ねた様子をご紹介します。

第1回「SDGsってどう思いますか?」という質問から始まった顔合わせ

世の中の潮流として叫ばれている、SDGsや環境教育について、率直にどう思っているのかという意見交換から始まった第1回。運営側も含めて、まだまだ期待より不安が大きいながらも、現時点でのイメージを共有しあいました。

教材開発
教材開発

第2回 リサイクルに関する一部の施設を見学

参加している先生方の中には、実は大崎町にお住まいでない方も多かったため、大崎リサイクルシステムを担う施設のうち、有機工場と埋立処分場を見学に行きました。

初めて現地を訪れる方がほとんどで、普段学校で分別したあとのごみがどうなっているのかを知って、驚いている先生方も多くいらっしゃいました。

見学後は先生たちご自身が、施設見学を通じて何に驚き、どう感じたのかを重点的に振り返りました。

埋立処分場を見学している様子

第3回 見学の振り返り、ヒト・モノ・コトに分けて作成

第3回の委員会では「子どもたちに何を伝えたいか」という視点で施設見学のまとめを行い、ヒト・モノ・コトのそれぞれの切り口から、地域にどのような資源があるのかを洗い出しました。

第4回 授業案作成スタート

第3回で洗い出した要素を元に、仮に授業を行う場合、どのような内容が考えられるか、1人1案ずつ作成。

リサイクルシステムの経済的な側面に着目した授業、図画作品コンクールを通して学ぶ授業、リサイクルを通じて未来の大崎町の姿について考える授業など、先生によって、着目するテーマや、活用したい資源がかなり異なることがわかりました。

第5回 ゲストをお招きしワークショップを実施

第5回の委員会では、これまでとは異なり、外部のゲスト講師をお招きして約1日かけ、ワークショップを行いました。

ゲストは、教材検討委員会の外部アドバイザーである元木一喜さんと、東京の小学校でSDGsに関する授業を行っている木所聡さんです。

元木一喜さん
木所聡さん

お話いただいた内容は、先生方にとっても刺激的だったようで質問も多く飛び交っていました。

委員会の最後には2つのチームに分かれて、それぞれの理想とする授業のイメージを共有しあい、教材の骨子の作成にとりかかりました。

第6回 系統表と授業案を作成

第6回は、前回のワークショップの内容も振り返りながら、引き続き各チームでどんな成果物を作るべきか議論しました。

子どもたちが使う教材よりも、先生方に向けた資料が必要なのではないかという全体の認識が生まれ、それを元に各チームの関心に合わせて2種類のアイデアを具体化することになりました。

第7回 目白大学・中山博夫先生からの講義

第7回には、日本学校教育学会 実践研究委員会で委員長を務めていらっしゃる目白大学の中山先生から、授業を実践する際の工夫や教師としてのスキルに関して、オンラインでお話を伺いました。

ここで聞いたことを授業で実践してみた先生方もいらっしゃったようです。

第8回 冊子の詳細を決めて完成へ

最終回を目前に、ラストスパート。委員会が開催される時間以外でも、それぞれ宿題を持ち帰り、冊子作りの細かい部分を話し合って、完成に向けて制作を進めました。

こちらが、完成した冊子です!

第9回 振り返り

最終回では、全9回の委員会を経て先生方の心や考えの変化を振り返りました。完成した冊子を各学校でどのように活用できるか、これからの大崎町の教育や、そこにかける先生方の思いと、未来への展望を共有しました。

冊子に込められた先生方の想い

議論を重ねるごとに大きく変化したことの一つに、制作するのが「子ども用」のものから「先生用」のものになったことが挙げられます。

当初は、子どもたちが使用する教材を作るための議論が行われていました。しかし、授業をイメージして作成を始めると、そもそも、子どもたちに教える内容や、授業のやり方を先に決めるのは難しいという結論になりました。そこで、まずは授業を行う先生たちの参考になるものがあるべきではないか、という方向性が生まれました。

義務教育で定められたカリキュラムをこなしながら、ESDや環境教育など時代に合わせた教育を行うことは一筋縄ではいきません。本当に教育現場で活用できるものを作りたいという先生方の想いがつまった冊子が、大崎町の教師の皆さんの支えとなるのではないでしょうか。

冊子の最後のページ

教材検討委員会を終えて

「教育プロジェクト」を考える上で、初めは子どもたちの姿ばかりを想像していました。しかし、先生方と時間をともにすることで、子どもたち同士の関係性、それらを見守る先生方や職員の方の動き、学校の中での指示系統、家庭や地域とのつながりなど、配慮したい立場や関係性が多岐に渡ることがわかりました。

子どもたちのことを思えば思うほど、ただ授業をしたり、新しい機会を作ったりすれば良いのではなく、より俯瞰的なアプローチを考える必要があると気づきました。

子どもたちが1日のうち最も長く共に時間を過ごす大人は、先生方かもしれません。子どもたちを近くで見守っている先生方による冊子が学校に導入され、地域での連携もより強化されるとともに、子どもたちにも先生方にも、より良い時間が生まれることを願っています。また、校外にいる我々だからこそできることを考え、これからも実践していきたいと思います。

(文・アシスタントディレクター 森川和花)

プレスリリース

取材記事

クレジット

大崎町教育委員会 指導主事 須藤 信司 様
大崎町立大崎小学校    川野 智広 様
大崎町立菱田小学校 石川 俊昭 様
大崎町立中沖小学校 吉村 浩章 様
大崎町立持留小学校 興梠 博紀 様
大崎町立大丸小学校 大石 博文 様
大崎町立野方小学校 川原 みゆか 様
大崎町立大崎中学校 高橋 慎二 様
プレイフルラーナー・認定ワークショップデザイナー/株式会社LITALICO  元木一喜 様
公立小学校教員/ワークショップデザイナー 木所聡 様

 

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