あなたとおおさき未来デザイン会議 DAY3 開催レポート-前編-

あなたとおおさき 未来デザイン会議

令和6年11月30日より『あなたとおおさき未来デザイン会議』がスタートし(主催:大崎町SDGs推進協議会)、今年3月にかけて「これからの大崎町の3年間をみんなで一緒に考える」をテーマにプログラムを開催中です。レポート3本目は1月25日〜26日に開催されましたDAY3の内容です。今回は大崎町を飛び出し、宮崎県新富町を舞台にフィールドワークとワークショップを行いました。まずはフィールドワークの様子からレポートしたいと思います。

あなたとおおさき未来デザイン会議 ロゴマーク

<目次>

オープニング

大崎町からバスで新富町へ出発し、大崎町SDGs推進協議会・事務局の大保拓弥より、DAY1~2の振り返りとDAY3の目的・流れの説明がありました。

目的については以下の通りです。

<DAY3の目的>
・新富町の挑戦から学び企画づくりに活かそう!
・チームの解くべきイシューを設定しよう!
・企画をつくり、人に伝えてお金を集める体験をしよう!

活動紹介 白水梨恵さん(一般社団法人 横川kito)

オープニング後は、霧島市横川町を拠点に地域づくり事業を展開されている『一般社団法人横川kito』代表の白水梨恵さんより活動紹介がありました。

<白水梨恵さんプロフィール>
2013年に鹿児島へUターン。2017年には霧島へIターンし、人材育成やキャリア教育事業に携わる。2020年11月に一般社団法人横川kitoを立ち上げ、現在は横川町を拠点に鹿児島県内の地域づくり事業を行いながらカフェ&ゲストハウス横川kitoや菓子店&GALLERY横川正丸屋を運営している。

一般社団法人横川kito 白水梨恵さん

「横川町は人口12万人の霧島市の中でも3000人程度で過疎化が進んでいる地域ですが、課題もたくさんある中で磨けば光る原石のような良いモノもたくさんあります。そんなまちを“いいな”とピンと感じてくれる人を増やしたい。そう思い、外から横川に人を連れてくることを軸に活動を始めました。」

昭和6年築の古民家を改装し『café&guesthouse 横川kito』を2021年4月にオープン。そこを起点に行政や地域を巻き込み、企画事業や商品開発などを展開していったといいます。

横川町で活動を進める中で大切にしていることを教えてくださいました。
・新しいモノをつくるのではなく、地域にある活用しきれていないモノを掘り起こすこと
・掘り起こしたモノをお金として経済に繋がるカタチで人の手に渡るようにすること

画像提供:白水梨恵 一般社団法人横川kitoの事業
写真提供:白水梨恵 昨年8月にオープンした横川正丸屋 大正時代に建築された文化財を活用

白水さんが横川町で活動が展開できるようになった大きなきっかけが町内で1年間かけて開催された未来づくりワークショップ(霧島市主催)だったそうです。

「地域の皆さんと課題の洗い出しを行い、まちにどんな課題があり、どんな資源があって、それをどう生かし10年後の未来に繋げていくのか。そのためには今何ができるのか。そこを考えていきました。実際にテストマーケティングを行い、今の横川町内のいろんな動きに派生してきたという背景があります。」

その中で生まれてきたこととして
・横川町への移住者が増えてきた
・横川町だけではなく過疎化が進んでいる周辺エリアとの連携やプレイヤーの育成に繋がってきた
・行政だけでなく民間との関わりも増えてきた
を挙げてくれました。

写真提供:白水梨恵 一般社団法人横川kitoメンバーと 半分以上が移住者

新富町現地フィールドワーク(案内人 高橋邦男さん)

新富町へ到着後、「こゆ財団」理事で編集者の高橋邦男さんと合流し、新富町内を巡りながら財団の変遷やチャレンジの土壌が生まれた経緯をインプットする時間となりました。

●フィールドワークルート
航空自衛隊新田原基地跳鷲台→日向新富駅→いちご宮崎新富サッカー場→有機米農家 おにぎり宮本→地域商社 こゆ財団

<高橋邦男さんプロフィール>
株式会社WONDER COMMUNICATIONS 代表取締役。2017年に宮崎県新富町が設立した地域商社こゆ財団に創業メンバーとして参画。2020年からは2代目執行理事として事業を手がける。2023年に執行理事退任後、同社を創業。編集出版事業を立ち上げながら、合作株式会社にも参画している。

こゆ財団 理事 高橋邦男さん

「“こゆ財団”は創業して6年経ちますが、うまくいかなかったことが大半です。取り組みの成果が少し現れているだけで根本的に変えないといけないところはたくさんあります。」

冒頭、そのように話された高橋さん。そこから「こゆ財団」の立ち上げ時のお話をしてくださいました。

まちの課題について民間主体というよりも行政依存の雰囲気だったこと。
しかし、行政ではできない部分もあるので、民間でも動けるチームを作る必要があったこと。

この2つを解決するために新富町観光協会を2016年に解体し、2017年に地域商社「こゆ財団」が設立されたといいます。出資金が少ない中、業績を伸ばさない限り、予算がほぼない状態でのスタートだったそうです。

こゆ財団立ち上げ時に事務所として使用していた日向新富駅へ

こゆ財団がビジョンとして掲げているのが「世界一チャレンジしやすい町」。

どんな環境でも条件でも整っているところなんてどこにもない。まずは自分たちができることを小さくやっていこう。

そのマインドからまちの中でも動きが広がり、次第にチャレンジする土壌が醸成されていったと高橋さんは話します。

日向新富駅舎内  この場所から始まった小さな挑戦について説明している様子

小さなチャレンジを続けていった先の変化の例として、この後登場する宮本恒一郎さんやミル姉さんのような人材が活躍しています。行政としては、過去にはなかった街の新しいブランドとしてサッカーのまちづくりに取り組んでおり、民間と行政の両方でチャレンジが進んでいると説明してくださいました。

そこから
・移住者や若い世代などがまちに定着できるような環境づくりを行政や民間が連携し行っていること
・チャレンジする人をまち全体で応援する雰囲気を醸成していること
・上記2点は挑戦を諦めない気持ちと長期的に小さく挑戦してきた結果がもたらしたものであること
そう感じたフィールドワークでした。

新富フットボールセンター

トーク➀香川亮さん(こゆ財団 執行理事)

続いては「こゆ財団」の事務所「チャレンジフィールド」へ。

この時間では「新富町内で挑戦を続ける人たちの体験をインプットする」ことを目的とし、新富町内でチャレンジを続ける3名のお話を伺っていきます。

一人目は「こゆ財団」執行理事の香川亮さんのお話です。香川さんからは「こゆ財団」の変遷や取り組みを広げる中で何を意識しているのかを中心に話がありました。

<香川亮さんプロフィール>
2017年創業からアグレッシブな地域創生アクションで名を馳せている地域商社こゆ財団3代目執行理事。宮崎県内の国産うなぎの養殖から製造・販売まで一貫した国産うなぎ総合企業で販路開拓やブランディングを10年経験し、2024年6月より現職。

こゆ財団 執行理事 香川亮さん

「こゆ財団」はふるさと納税業務で得た収益をもとに、長期的にまちで稼ぎ続けられる人材育成への投資を事業の柱にしているという導入から入り、そこからどんな事業や人材育成を行ってきたか説明がありました。

その中で特に意識していることとして
・全て「こゆ財団」が事業の窓口となり、町外の事業者ではなく町内の事業者とカタチにしていくこと
・ただ稼ぐだけではなく、価値をつけて都市部に売り出すこと
・得られた利益をまちに投資していくこと
・上記3つの循環を持続的にしていくこと
を挙げられました。

まちの将来を想う心があっても、どんなに挑戦しても、周囲から厳しい声はどうしても出てくるのだとか。それでも「世界一チャレンジしやすいまち」のビジョンのもと、高みを目指してチャレンジを続けることを大事にしているそうです。

さらに「強い地域経済を作る」というミッションを掲げ、人材育成の他に取り組んでいることも紹介してくださいました。

・「こゆ朝市」の毎月開催(運営も含めて)
・都市部における地域おこし協力隊募集イベントの開催
・都市部の企業と地域企業とのタイアップ
・空き家リノベーションを行った宿の運営
・地域資源を活用した商品開発…etc

トーク②宮本恒一郎さん(合同会社オーガニックファームZERO)

二人目は「合同会社オーガニックファームZERO」の宮本恒一郎さんです。宮本さんからは有機農業や飲食業に挑戦することになった背景を中心にお話がありました。

<宮本恒一郎さんプロフィール>
農水省役人がこぞって視察に訪れる日本を代表する有機農家。苦節40年の農業経営を経て有機JASやアジアGAP認証を取得。2023年にはG7農相サミットに米を提供し、諸外国の農相を唸らせる。直営店「有機米おにぎり宮本」も大ヒット中。

合同会社オーガニックファームZERO 宮本恒一郎さん

宮本さんが有機農業を始めたのは21年前のこと。きっかけは実家の米農家を継業し、米作りをする中で生じてきた違和感だったといいます。

「米農家は利益を上げるためにどうしても多くの肥料や農薬を使わなければなりません。また、大量生産の中だと自分たちが作った米を誰が食べているのかわからないこともあり、モヤモヤすることも多かったんです。」

「利益は少なくても、自分たちが愛情を込めて作ったお米を求めてくださる消費者に安心安全なものを届けたい。そんな思いが強くなり、有機農業を始めたんです。」

自社ブランド 宮本

そんな宮本さん。60歳を過ぎた今も、新しい挑戦を続けています。その挑戦の一つが「有機米おにぎり宮本」のオープンです。

オープン前の2年間は新富町が運営する「新富町チャレンジショップ」にておにぎり屋として出店していたそうです。さらに、実店舗を開業するにあたりクラウドファンディングにも挑戦。「こゆ財団」に所属する地域おこし協力隊が広報チームを作ったり、町内外問わず多くの人がさまざまなカタチで支援をしてくれたなどのエピソードをお話してくださいました。

「正直、有機農業を続けていると資金面で苦しむ場面が多々あります。それでも、挑戦する人の思いを汲み応援してくれる新富町の土壌があるからこそ、続けてこられたと思っています。」

「有機農家だからこそできるお店づくりがあると思います。その一つが有機農業の魅力やおにぎり文化を広げることなので、今後も皆さんが安心して食べられる安全なものを提供していきたいです。」

ランチで頂いた「有機米おにぎり宮本」のおにぎりセット

トーク③松浦ちひろさん(松浦牧場のみるくハウス)

最後は「松浦牧場」を営む松浦ちひろさんです。「こゆ財団」を飛び出し、実際に店舗「松浦牧場のみるくハウス」へ伺いました。

<松浦ちひろさんプロフィール>
新富町で酪農を営む松浦牧場のママでありながら「ミル姉さん」を名乗る。怪しくもキュートなホルスタインメイクで2024年に商店街に「ミルクハウス」をオープン。

松浦牧場のみるくハウス 松浦ちひろさん

松浦さんは「松浦牧場」に嫁いだのがきっかけで酪農の世界に足を踏み入れたといいます。数年前から自社の牛乳を使った商品開発にも取り組み、多くの人に知られるようになったのだとか。

まちを訪れた人が牧場以外でも商品やメニューを楽しめるように、昨年8月より「松浦牧場のみるくハウス」をオープンしたそうです。

実は、松浦さんがお店をオープンした物件は、「こゆ財団」が2018年より借り、小さいことからチャレンジしたい人が次のステップへ進めるように、チャレンジショップとして場所を提供しているとのだとか。

「まちの中で小さくカフェをしようと思っても、挑戦できる場所は中々ないと思います。ありがたいことに“こゆ財団”の協力もあり、カフェとしてオープンすることができました。」

ミルクハウス内にて
自社で製造している商品 その他にもミルクソフトが人気とのこと

松浦さんのお店でお腹を満たされたところでフィールドワークはここまで。続いての後編では現地フィールドワークのインプットをもとにグループごとに行ったワークを中心にレポートしたいと思います。

参加者の声

・実際に体験することの大切さを改めて実感できたし新富町の取組は大変参考になりました

・視察では、こゆ財団成り立ちの背景から、実際の取り組みまで知ることができました。

取材・執筆・撮影:上 泰寿(ケアの編集者)

当日の様子をまとめたパネル

クレジット

登壇

  • 一般社団法人横川kito 代表理事 白水 梨恵様
  • こゆ財団 理事/WONDER  COMMUNICATIONS 代表取締役 高橋 邦男様
  • こゆ財団 執行理事 香川 亮様
  • オーガニックファームZERO 代表 宮本 恒一郎様
  • ミルクハウス 店長 ミル姉さん

協力

  • ゆうぼくみん企画 有賀 沙樹様
  • ひなた写真館 中山 雄太様

ケータリング

  • I am Kitchen 永住 美香様

アーカイブ

  • 取材・執筆・撮影:上 泰寿様(ケアの編集者)
  • パネル制作:中原 未央様(合作株式会社)


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