【ALL COMPOST PROJECT】 東京都利島村の皆さまが研修に来られました

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大崎町SDGs推進協議会(以下、協議会)では、リサイクル率80%以上を誇る大崎リサイクルシステムを他の自治体でも実践することを通じて、大崎町だけでなく社会全体で環境負荷を減らすことを目指しています。

家庭から出るごみ量の6割を生ごみと草木ごみが占めており、これを大崎町では完熟堆肥化しています。

この生ごみ堆肥化を他の自治体に広げていく取り組みを「ALL COMPOST PROJECT」と題して、推進しています。

2023年には長崎県対馬市でALL COMPOST TSUSHIMAを、静岡県西伊豆町でALL COMPOST NISHIIZUを実施しました。

昨年度の取り組みの様子はこちら

そして今回、人口わずか300人程の東京都利島村の方々が、大崎町の取り組みに興味を持ち、2024年6月に研修に来られました。

今回は、ALL COMPOST PROJECTメンバーが事前に実施した利島村への視察と、利島村の皆さまが大崎町に来られた際の研修の様子をご紹介します。

東京都利島村について

利島村の外観。利島村役場ホームページより。

東京都利島村は、伊豆諸島に位置する人口わずか300人の小さな島です。豊かな自然に恵まれ、椿の花が有名で産業の大部分を椿油が占めるほど、「椿の島」としても知られています。

人口は少ないのですが、実は20-40代の約84%がIターンなどの移住者で占められています。

毎年本土の大学生が利島村の椿産業に関わる機会があり、その子たちが関係人口となりいずれ島への移住を検討するんだとか。

役場の方々も移住者が多く、多様なバックグラウンドを持つ方々が集まっていて、とても興味深いまちでした。

利島村が抱えるごみ問題とは

利島村は離島のため、利島村で出るごみは島内で処理をするか、処理費と高い運搬費を支払って、島外搬出をしなければなりません。

さらに一炉ある焼却処理施設は更新時期を迎えています。

更新に際しては、離島のため建設費が大きく、想定より建て替えコストがかかることが見えています。

島内で出る廃棄物をどう持続的に処理をするかが喫緊の課題となっています。

利島村は実は数年前からすでに生ごみの回収と処理を行なっています。

回収は大崎町と同じ青い樽を使い、生ごみの処理には大きな生ごみコンポスト槽を3基設置しています。

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コンポスト槽は、生ごみを入れたあとに微生物の粉を入れて発酵を促すという仕組みになっていますが、発酵が上手くいっていないこともあり、腐敗の臭いが少し強くなっています。

この生ごみの処理方法について、大崎町の手法を取り入れることによってもう少し適切に処理できないかというのが、今回のご相談のきっかけにもなります。

利島村を訪問してきました

私たちALL COMPOST PROJECT チームは、現地の状況を把握するために、2024年4月に利島村を訪問しました。

利島村へは、フェリーや高速ジェット船が走っていますが、冬の期間は天候の影響を受けやすく、就航率が低くなります。

今回の訪問も大島〜利島村間の船が欠航となり、ヘリコプターで移動という筆者にとって初めての経験をしました。

利島村では生ごみの処理方法を確認させていただいた他、堆肥化の実証実験候補地も確認しました。

利島村は一周8kmしかないとても小さい島で、島民が出す生ごみも年間10t程度しかありません。これは大崎町で出る量の1/100量で、堆肥化によって最終的にできる堆肥の量は2tしかありません。

利島村の農地はほとんどが椿山で、野菜などを作る農家はいません。家庭菜園で野菜を作られている方は何人かいて、堆肥などは本土から島の農協を通じて購入をしているとのことでした。

生ごみを堆肥にする実験自体はすぐにできますが、堆肥の使い道が限られているような場所では、何を目的として大崎町のような完熟堆肥を作るのかをしっかりと検討する必要があります。

他にも堆肥を山に撒くことを通じて土壌が豊かになり、ひいては海も豊かになるというように、利島村の自然資源に寄与することを目的とすることも考えられます。

利島村の港。

現地訪問をして、実証実験の目的が様々な観点から考えられたのが良かったです。

利島村から大崎町へ

そして、2024年6月23日〜24日の1泊2日の行程で今度は利島村の皆さまが大崎町に研修に来られました。

研修行程

6月24日(月)

  • AM 大崎有機工場研修(堆肥仕込み体験、仕込んだものの水分調整と篩がけ)
  • PM 生ごみ堆肥化に関する質疑応答

6月25日(火)

  • AM 仕込んだ堆肥の確認。ホイルローダーを使った切り返しの方法を見学。
  • PM 下水道汚泥堆肥の堆肥化行程の視察、振り返り・今後に向けた打ち合わせ

堆肥を仕込む体験

初日は大崎有機工場で、堆肥を仕込む行程を手作業で体験していただきました。

体験用に用意した生ごみ100kg強がちょうど利島村の1日分の生ごみと同量で、イメージがしやすい量となりました。

手順としては、まずは生ごみをコンクリートの上にあけて、スコップで細かくしていきます。今回の生ごみは水分が多かったため、流れ出た水分はこの後の行程で草木チップを多めに敷くなどして吸収させていきます。

生ごみと同量の草木を、すくって上からパラパラと振りかけるようにして、空気を含ませていきます。最後は山にして見えている生ごみに草木チップを振りかけて完成です。

今後の実証実験の想定もして、一次発酵後の篩に掛ける作業も体験していただきました。

午後からはそおリサイクルセンター、大崎町役場職員も交えて打ち合わせを行いました。

利島村役場の皆さまには、協議会が運営するGURURIにもご宿泊いただきました。

今後に向けて

最終日には、実証実験計画書の骨子をもとに、どんな目的で実証をするのか、実証に必要なものと、かかるコストなどを洗い出していきました。

今回の双方への訪問を経て、実証実験にかかる費用や実証実験場所などを検討し、実験の可能性を探ることになります。

利島村でできる堆肥の量は年間わずか2tになりますが、島の中で生ごみをしっかりと循環させて土に返すことで、島の自然環境がどのように変わっていくのかが、島での実証の興味深い点になります。

その意味では利島村での実証はALL COMPOST PROJECTチームにとっても面白い知見が得られる可能性があります。

今後の展開をぜひお楽しみに!

(文・ALL COMPOST PROJECT担当 藤田)

クレジット

大崎町にお越しいただいた方々

  • 利島村役場 環境建設課 前田様
  • 利島村役場 環境建設課 内藤様
  • 利島村役場 総務課 本間様
  • 一般社団法人フィッシャーマン・ジャパン 島本様
  • 一般社団法人フィッシャーマン・ジャパン 川鍋様
  • ランドブレイン株式会社 齋藤様
  • ランドブレイン株式会社 山内様

ALL COMPOST PROJECTにご協力いただいた方々

  • 大崎町役場環境政策課
  • そおリサイクルセンター
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