HISTORY 背景・ リサイクルの歴史
大崎町には、もともと焼却処理場がなく、出たごみは、すべて埋め立てにより最終処分をしていました。平成2年からは大崎町と旧志布志町、旧有明町の合意のもと協働で新たな埋立処分場(清掃センター)の供用を開始。しかしながら、当初計画していたよりも多くのごみが排出され、予定されていた計画期間を待たずして埋立処分場の残余年数が、ひっ迫します。このことから、大崎町では新たなごみの処分方法の検討をすることとなりました。
APPROACH アプローチ
当初、まず検討されたのは焼却炉の新設でした。しかし、焼却炉建設には補助金などを活用して費用をまかなうことができたとしても、毎年莫大な運用費がかかります。
次に検討された、新たな埋立処分場の建設については、悪臭を放つ迷惑施設というイメージが払拭できず、周辺住民の理解を得ることがむずかしいため却下されました。最終的に、ごみの減量化による、既存の埋立処分場の延命化が選択されたのです。
平成10年、ごみの分別・回収の取り組みは、資源ごみ(カン・ビン・ペットボトル)の3品目からスタートしました。その後、徐々に分別品目を増やし、平成13年から試験的に生ごみの回収を開始。平成14年には民間の有機物堆肥化工場が稼働を始め、平成16年には有機物(生ごみ・草木)の埋め立てが全面禁止となります。その後も住民の意見によって変更され、現在では27品目に分別され回収されています。その結果、平成10年と比較し、平成29年度には約84パーセントの埋め立てごみを削減しています。
- 平成2年7月
- 曽於南部清掃センター埋立開始
- 平成10年9月
- 資源ごみ3品目分別開始(缶・ビン・PET)
- 平成11年8月
- そおリサイクルセンター完成(民間施設)
- 平成12年6月
- 資源ごみ16品目分別収集を開始
- 平成13年4月
- 生ごみモデル地区回収を開始(180戸) 資源分別収集で雑金属などを追加し24品目に
- 平成13年10月
- 菜種の播種を実施、菜の花エコに着手
- 平成14年4月
- 生ごみ分別と割り箸を追加 草木・剪定くずと生ごみ堆肥化, 有機工場(民間施設)稼動
- 平成14年6月
- 全事業所の生ごみ分別を開始
- 平成14年7月
- 埋立処分場が35年の延命
- 平成16年7月
- 有機物の埋立処分を全面禁止
- 平成17年7月
- 陶器類の収集を追加し28品目に
- 平成18年4月
- 粗大ごみのステーション回収を廃止 戸別回収へ
- 平成23年10月
- 高齢者等へのごみ出しサポート事業開始
- 平成24年8月
- 新聞+チラシ, 雑誌+雑古紙を統合し26品目に
- 平成24年8月
- JICA草の根技術協力事業にてインドネシア国デポック市への環境指導開始(3年間)
- 平成25年4月
- 使用済み小型家電の分別収集を開始し27品目に
- 平成27年8月
- JICA草の根技術協力事業にてインドネシア国バリ州への環境指導開始(2年間)
- 平成29年2月
- そおリサイクルセンターがJICA普及・実証事業にてデポック市へ中間処理施設設置支援開始
ORGANIZA
TION
住民・企業・行政の協力体制
大崎町のリサイクルの取り組みは、住民・企業・行政の三者が協力して実施しています。
住民の役割
住民の役割は、家庭や事業所で、ごみをきれいに分別すること。容器についた食品残渣など、すべて洗って取り除き、それぞれの素材ごとに分けます。また洗浄・分別したごみを、指定のごみステーションへ持って行くところまでが住民の役割です。住民には排出者責任があるという考え方のもと、ごみ袋には自分の名前を書いて、ごみステーションへ出します。
また、大崎町内の住民は、衛生自治会という住民組織に加入しています。衛生自治会とは、ごみを出す世帯は原則的に加入する行政から独立した組織です。分別品目を検討したり、ごみを出す曜日や時間帯を住民の声を汲み取りながら決定したりします。
企業の役割
住民が決められた曜日に出したごみを回収するのは、企業の役割です。大崎町のごみは「有限会社そおリサイクルセンター(以下、そおリサイクルセンター)」が回収し、更に細かく分別します。また、資源ごみの買取業者とのつながりを築き、分別されたごみを純度の高い資源として販売できるよう、ごみの出口を設計するのも企業の役割です。
資源ごみの中でも町内で循環するルートが確立されているのは、排出されるごみの60%以上を占める、生ごみや草木などの有機物です。「そおリサイクルセンター」は、住民が専用のバケツに出した生ごみと草木を回収したのち、有機工場に搬入します。有機工場では、有機物を破砕して混ぜ合わせ、水分量を調整しながら、かく拌をおこない、半年以上の時間をかけて堆肥化します。こうして生まれた堆肥は完熟堆肥「おかえり環ちゃん」として販売され、有機物の完全な地域内での循環を実現しています。
行政の役割
住民と企業が、スムーズなごみの分別と回収をおこなえるよう、制度設計をサポートし、収集したごみの最終処分先を確保するのが行政の役割です。1998年に、埋立処分場の延命化が決まった際、住民が分別の目的と必要性について納得できるよう、行政職員が150ある集落を周り、全部で450回以上の住民説明会をおこないました。また各集落のリーダーが代替わりをした際も、分別の目的を共有するため、毎年1回埋立処分場でごみの現状を学ぶ研修会などを実施しています。
OSAKI RECYCLE
SYSTEM
「大崎リサイクルシステム」は、住民・企業・行政の協働による、焼却炉に頼らない低コスト ※な廃棄物処理システムです。「OSAKINI プロジェクト」を通じて、20年以上続くこの仕組みが、より循環する社会システムになるよう取り組んでいきます。
※低コスト:環境省策定一般廃棄物会計基準に基づき大崎町が算出
資源循環図
ACHIEVE
MENT
成果
01ごみの減量・
埋立処分場の延命化
ごみの分別回収を続けた結果、大崎町では埋立ごみの80%以上の減量化を達成しました。当時あと数年で満杯になると言われていた埋立処分場は、今後も約40年間、継続して使うことができると言われています。
02処理経費の低減・
売却益金の町への還元
リサイクルの取り組みは、ごみ処理事業経費の低減にも貢献しています。一人当たりのごみ処理事業の全国平均が16,400円(※1)のところ、大崎町は9,364円とおよそ2/3の額で済んでいます(※2)。また、分別回収されたごみはリサイクルされる際に再生可能な資源として業者に売却されます。大崎町では、およそ725万円が売却益金(※3)として、町の事業に活用されています。
※1:2021年3月30日環境省発表
※2:環境省策定一般廃棄物会計基準に基づき大崎町が算出した2021年3月31日時点の数値
※3:資源ごみ売却による歳入実績の平均額
03大崎町リサイクル
未来創生奨学金
卒業後、10年以内に大崎町に戻ってきた子どもたちの保護者に対して、最大で元金と利子の返済を全額補助する奨学金制度を、大崎町と鹿児島相互信用金庫と慶應義塾大学SFC研究所が協働で設立しました。町内の資源循環の流れと同様に、大崎町で育った人材が勉学に励むことを支援し、故郷の活性化を担う人材に成長し、再び大崎町に戻ってきて活躍するよう願い、つくられた仕組みです。この奨学制度には、大崎町のリサイクルの取り組みによって生まれた益金が活用されています。
04雇用の増加
「そおリサイクルセンター」では、近隣自治体も合わせておよそ10万人分の資源ごみを取り扱っています。リサイクルの取り組みがスタートしてから、新たに40人程度の雇用が生まれています。
GLOBAL OPERATION 海外展開
「大崎リサイクルシステム」は海外からも注目され、平成24年度からインドネシア共和国のデポック市、バリ州に廃棄物の減量化を目的としたごみの分別・排出・収集・運搬処理のシステムづくりの環境指導を始めました。今後はデポック市、バリ州に加えて人口1千万人に迫るジャカルタ首都特別州でも、「大崎リサイクルシステム」の導入に関して、実証の取り組みがおこなわれる予定です。